ウルトラの金言 人生を戦い抜くための勇気と知恵 (双葉新書)

ウルトラの金言 人生を戦い抜くための勇気と知恵 (双葉新書)の詳細

著者の牧詩郎というペンネームは、怪奇大作戦の主人公の名前をもじったものだろうが、本業の学術者らしい緻密な収集・分類を活かした、120の「金言」は、大半はウルトラファンならよく知っているものだが、それだけを体系的に並べている点と、凡百のムック本とは格の違う知的な洞察とで、値段以上の価値がある。ただし、それは「資料集」としてだ。ウルトラシリーズに託した脚本家達の台詞に秘めた想いを軽んじるものではないが、いま正に人生の真っただ中にあるウルトラ世代は、既に十分に大人であり、ウルトラの揺り籠で培った感受性や正義や悪への認識を踏まえた更に素晴らしい言葉を持っているべきだろう。戦争や表層的な正義を鋭く射抜いた金言と並んで、ウルトラの母の言葉や「愛と信頼」「仕事とリーダーシップ」なんてな場違いな言葉が並ぶのには、申し訳ないが閉口する。ある評論で（全く肯定はしないが）、ガンダム世代はその世界観を自らの仕事に結びつけたがり、ワンピース世代は夢と現実を切り分けるというものがあった。私も含めウルトラ世代はどっちなんだろう？正解はないのだろうが、中間管理職にして軍の前線将校というキャラを色濃く出していたキリヤマ隊長や加藤隊長の言葉にこそ、リアルウルトラ世代が含蓄をもって噛み締めるべき言葉があるように思った。